裾野赤十字病院院長芦川 和広
裾野赤十字病院は、北西に富士の麗峰を仰ぎ、東に箱根、南に駿河湾・伊豆半島がある風光明媚な地域に位置しています。主要幹線である東名高速・新幹線からのアクセスも比較的良く環境に恵まれた病院です。
裾野市の中核病院として病床数は104床(地域包括ケア30床、感染症6床含)、常勤医師8名、非常勤医師18名と比較的小規模ですが、小さいながらも一つの赤十字病院として誇りをもって医療に取り組んでおります。
私は30年間、良き時代の外科医として、各分野で輝ける恩師の元で、大学病院、川崎市立病院で消化器癌や緊急対応の手術、乳腺外科診療、救命救急センターで救急医療、多摩がん健診センターで消化器内視鏡、アメリカで最先端のがんセンターであるMD Anderson Cancer Centerで核内転写因子NF-kBと関連した制癌作用(がんの予防的治療)の研究、そして10年間、裾野赤十字病院の外科部長を務め研鑽してまいりました。
今後は、裾野赤十字病院の病院長として、急性期一般医療・地域包括医療・健診医療など、将来を見据えた社会的地域医療に貢献して参ります。
「人道」「博愛」「奉仕」の赤十字理念
裾野赤十字病院の基本理念として「人道」・「博愛」・「奉仕」の赤十字精神的に基づき、地域の人たちから信頼され、愛される病院、地域社会に貢献できる病院を目指し実践します。
私は「全ての人に人として、思いやりを持って医療を提供すること」
”裾野赤十字から患者さまに優しく声をかけ受け入れる”
”裾野赤十字から患者さまが気軽に話せるようにし、きちんと話を聞き入れる”
”裾野赤十字で患者さまがどう困っているかを感じとり、患者さまに応じた医療を提供する”
この様な当然のことが、とても大切であると考えています。
将来を見据えた地域医療への取り組み
我々は、H30年4月から裾野市在宅医療介護連携支援センター「あしたかつつじ」、平成30年9月より訪問看護ステーション「すその日赤」を開設し、高齢者が自宅で安心して暮らせるよう、地域社会を支援することが可能な組織づくりをしています。
裾野赤十字病院では、現在の医療提供体制をより効率的に機能変換する為、地域医療の充実を目指し、急性期一般病床の半分の45床を地域包括ケア病床と、来たるべき超高齢化社会にふさわしい体制づくりを平成31年夏頃に予定しています。
日本人の平均寿命は、84.2歳(2018年、WHO、発表統計)で、我々人類が長い歴史の中で経験したことがない驚異と言える、少子超高齢化社会を迎えています。これは寿命が70歳と違い90歳を超えどう日常生活をしていくか想像できないことで、その子供たちは生産年齢を過ぎ、親の面倒をみるのが難しくなり、独居や老々介護の世帯が増えているのが現実です。我々が20年、30年後に高齢者となり医療情勢がより深刻になった時、”食事を取れない・誤嚥する・認知能力の低下・動けない・排便排尿機能の低下など”急に日常生活が困難になった時、受け入れる医療機関や医療資金が不足する深刻な問題が予見されています。現在、国・県・市の行政は地域医療構想として早急に解決しなければいけない問題としていますが、難航しているのが現状です。
地域医療構想の策定や地域包括ケアシステムの構築について真剣な議論が積み重ねられ、高齢者医療・介護医療を中心に焦点をあてることが最大の課題です。従来の”疾患を中心にした医療”から、高齢者患者の全身状態、治療に対する耐性、周辺環境、意思表示を整理し、その人にとっての”生きることの質や幸福を考えた医療”を心がけたいと考えています。
地域の基幹病院として急性期医療のみならず、今後も高齢者に優しい医療を提供し、これまで以上に地域に貢献して行きたいとと考えています。
災害医療への対策
当院では定期的に地域ボランティアの方々にご協力頂いたり、他の赤十字病院との合同の災害医療訓練を行なっております。また、赤十字グループとして東日本大震災、熊本地震、阪神淡路大震災などの災害の際には相互に協力し、実際の救援活動に参加従事しました。
もし、この地域に著しい被害を及ぼすと予想される災害である、東海・東南海地震、富士山噴火、箱根山噴火などの震災が起きた時、冒頭に記した小さな裾野赤十字病院は、災害で世界で最も注目される位置に立地する赤十字病院と言っても過言でないかもしれません。また、日本の中心であるこの地域で幹線鉄道・道路の影響を受けた場合のリスクは、深刻な事態が予想されます。この自然が巻き起こす大きな天災にいかほどの医療を提供できるか、その無力さは想像に難くありません。我々は地域の医療機関と連携し、皆様が少しでも安心できるよう、我々にできる災害医療への対策を日頃から事前に準備する必要性を考えています。
世界最大の医療グループである赤十字は日本各地、世界各国赤十字から各部門のスタッフの協力で、多数の救護班を速やかに編成集結し、大災害に人が対応しうる最大のシステムが出来上がっています。
信頼され愛される裾野赤十字病院
地域の急性期病院、地域医療支援病院としての役割を果たすために、近隣の開業医、超急性期の高次病院の先生方とも、地域医療構想としてより親密な連携を構築する必要性を考えています。裾野市近隣で急性期一般患者の入院対応可能な基幹病院として、支援・協力してくださる周辺医療機関の方々、患者さまに深い感謝の念を抱くとともに、今後もよりいっそう信頼され愛される病院にして参ります。
2019年4月